尚絅学院大学

人文社会学類 お知らせ

SDGsコラム 目標11 住み続けられるまちづくりを

2022/11/04

SDGs「目標11 住み続けられるまちづくりを」は、発展途上国に関連する細目が多い指標ですが、国連が発表している最新の報告 SDG Progress Report (2022) において、日本にも関連する都市における公共交通について見てみたいと思います(横井 渉央)。

公共交通へのアクセス

都市内での移動に用いる交通手段として、徒歩・自転車・オートバイ・自家用車・タクシー、そしてバス・地下鉄・市電などの公共交通があります。公共交通が充実していないと、所有や利用が高価となる自家用車・タクシーを使用できる人と使用できない人の間で移動可能な範囲が全く異なることになります。これは経済活動の差となり、貧富の格差がさらに広がることにつながりかねません(貧困の再生産)。

SDG Progress Report (2022) では、「世界の1500の都市地域の約4割についてのみ公共交通へのアクセス(バス等の停留所まで500メートル、もしくは電車等の駅まで1キロメートル以内)が提供されている。世界人口の約半分だけが公共交通への容易にアクセスであることを意味する」という現状が示されています。

ここ数年でも、仙台市地下鉄南北線の地下鉄延伸が富谷市や名取市の市長選挙で公約に掲げられるなど、地方の政治においても大きな争点になるトピックです。例えば富谷市でしたら、ベッドタウンとして自家用車やバスなどで通勤している住民が多い現状ですが、泉中央から北へ伸ばして富谷市を仙台市中心と直結することで、交通渋滞による環境汚染や時間のロスを減らすことができます。
 

公共交通の維持

バスについては、仙台市交通局が採算性を示す営業係数を公表しましたが、全路線について、収入を費用が上回っているという結果でした。多くの路線で収入の2倍程度、最大で10倍程度の費用がかかっています。日本全体で地方部の鉄道の赤字路線の存廃問題も各地域にとっては重大な問題です。もしも、費用に見合う収入があれば民間部門に任せておけるので、公共交通において採算性を問う意味があるかは難しい判断となります。

日本各地に今後数十年で人口が減少し、消滅するかも知れないという地域があることが取り沙汰されています。公共交通を今のままで維持できるか、何らかの新しい方法を導入できるか、注目されています。

1つのアイディアとして、公共交通の料金を実質無料とすることが考えられます。料金に等しい額のクーポンを沿線の商店等での購入に用いることができるようにすることで、地域経済の活性化と公共交通の維持が両立するかも知れません。

出典:
SDG Progress Report (2022) (アクセス日2022年7月15日)
「仙台市バス全44路線が2年連続で赤字」河北新報社 2022年9月26日 (アクセス日 2022年10月23日)