SDGsコラム 目標 6すべての人々の水と衛生の利用可能性と 持続可能な管理を確保する
2022/08/15
安全な水を利用する。そして、水を安全に利用する。(大川 亘)
安全な水
農林水産業関連の科目を担当するものとして、水のことについて皆さんと問題意識を共有したいと思います。
まずは、皆さんも社会科で公害病として習ったであろう「水俣病」、「イタイイタイ病」を思い出してください。前者は化学工場からの廃液中の「水銀」、後者は鉱山からの精錬廃液中の「カドミウム」による水質汚染が原因でした。汚染された河川・海での有害物質を生物濃縮によって蓄積した魚介類や、汚染水を引田して育てたコメを食べて、健康被害が発生したのです。
つぎに、東日本大震災によって発生した塩害農地のことを覚えていますか。農作物は土壌中の塩分が多いと、根から水を吸い上げることができなくなくなり枯死してしまいます。水田では水を張り、撹拌、水を落とすことでの土壌洗浄(除塩)を繰り返し行われました。また畑作地では土壌の入れ替えも行われました。しかし、農業用に使っていた地下水の塩水化によって生産団地の移動、栽培方法の変更を余儀なくされた作物もありました。それはイチゴです。イチゴは塩ストレスに非常に弱く、土耕栽培から高設ベッドでの溶液栽培への変更が進みました。
私たち人間を含む、多くの生き物のからだの大部分は水から成り立っていて、生命の維持には飲食物から水を取り入れる必要があるのです。地球に大量にある海水を淡水化する取り組みが世界中で行われていますが、限られた淡水を大事に使っていく必要があります。
水を安全に利用していく
近ごろは水による災害や被害といったものがニュースを賑わしているように思います。突発的な豪雨によって、土砂崩れ、堤防崩壊、排水能力超過による浸水などが発生しています。住宅地、農地のどちらでも大きな被害が連日報じられています。
もちろん適応策として、ダムや堤防の機能強化、都市部での雨水処理対策などは必要です。それに加え、山地の森林ならびに田畑など耕作地の保全により、植栽の持つ水資源の保持・涵養する力を利用することも防災につながると考えられます。
異常気象の背景にある気候変動については気象庁(仙台管区気象台)でも指摘しています。緩和策としての温室効果ガスの発生抑制・排出削減にむけ、皆さんの身の回りでできることを考えてみてはいかがでしょうか。