尚絅学院大学

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【それって、どんな学問?】経営学とは何か

2022/08/15

経営学とはどんな学問か(張 涛)

経営学とは

 経営学は現代社会において経済活動の主な担い手である企業とその事業活動を対象として、戦略、リーダーシップやインセンティブからなる組織づくり、イノベーション、マーケティング、企業統治といった概念を用いて説明し、事業の成長・拡大のための、効率的かつ倫理的な手法を提示する、社会科学領域の学問です。
 企業は事業活動を行う際に、企業を取り巻く複雑な外部環境の制約を受けます。たとえば、政権交代や税制改正といった政治的な要因、金融危機や貿易協定の締結といった経済的な要因、IoT・AIといったテクノロジーの進化、さらに、少子高齢化や人手不足など社会的な要因が挙げられます。それゆえ、経営学は、経済学、社会学、心理学、情報科学などの知識を活用した学際的な総合科学の特性を持っています。
 最も隣接している学問分野である経済学との違いについてよく質問されます。経済学では、企業を「さまざまな市場」という海に浮かぶ小さな島々のようにとらえ、さらに上空1万メートルから企業全体の行動パターンを分析しその行動原理を解明します。これに対して、経営学では、高度100メートルから企業の内部を観察し、具体的にどのような製品・サービスをどのような仕組みで製造販売しているか、業績など財務状況を詳細に分析し、内部と外部の影響要因を明らかにします。したがって、企業内部に有する人・カネ・モノ・情報等の経営資源(近年、企業外部の情報的資源の利活用、いわゆるオープン・イノベーションも提唱されている)が結び付けられ、最終的に競争力のある製品・サービスという形でアウトプットされる仕組みについて学ぶのが経営学です。
 

経営学を学ぶ意義

 学問には、かなり専門的で特殊な職業に就く者が学ぶものと、教養的で様々な人々が広く学ぶものがあります。たとえば、医学は医師になるための学問ではありますが、経営学は必ずしも経営者になるための学問とは言えません。一方で、大学で経営学ではない分野を専攻した人が大手企業のトップ経営者になるケースも多々あります。
 経営学を学ぶ意義としては、ヒト、組織、社会を観察し本質を見抜く力を養うことにあります。経営学の知見を様々な領域で活用することができます。大学駅伝チームの監督は経営学の知見——目標管理や理念、心理的安全性など組織づくりから始まり、チームを連勝に導いたのがその一例です。また、大学生も社会人も、パフォーマンスを高めるために経営管理(マネジメント)の基本であるPDCAサイクルという自己管理手法がよく助言されます。経営学が実学といわれるのは、このためです。
 

これからの経営学

 経営学は100年以上の歴史を経て、研究対象である企業の規模とその影響力の拡大とともに進化しています。今日では病院、学校、政治・宗教団体など、非営利組織の経営の重要性も増してきており、経営学の研究対象ともなっていますが、基本的に企業という営利組織の活動や仕組みに対する理解がその土台となっています。企業は営利組織とはいえ、その存在目的は利潤追求のみではありません。粉飾決算・不正会計などの企業不祥事を未然に防ぐ内部と外部監査体制をいかに構築運用していくか、社会とともに持続可能な成長と発展に向けて環境・人権問題といった社会的課題を解決しながら経済的価値を実現する経営戦略とはいかなるものか、などについてさらなる研究が求められています。