尚絅学院大学

人文社会学類 お知らせ

SDGsコラム 目標3「保健」 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を増進する

2022/07/04

すべての人に健康と福祉を 満たされるべき基本的人権(久慈るみ子)

健康も福祉も専門ではない筆者としては、いま世界で警鐘が鳴らされている課題の一つに触れ、目標3の分担者としてのお役目を果たすことをお許しいただきたいと願っている。

担当する科目の一つに『生活環境論』がある。この科目の第一のカリキュラムポリシーは「倫理観・社会的責任」としている。私たちの日常生活と地球環境問題は切っても切り離せない関係にあると考えるからだ。

さて、あなたが毎日身につけている衣服は石油業界に次いで2番目に環境汚染を生み出すと言われていることをご存じだろうか。水質汚染や土壌汚染の詳細は他の機会に譲るとして、ここでは最近の問題として世界が研究を進めているマイクロプラスチックファイバー(以下、マイクロファイバーとよぶ)の問題を紹介する。合成繊維の衣類を洗濯するとマクロファイバーが繊維くずとなり大量に発生する。これはファッション雑誌“VOGUE”でも取り上げられている。また、あなたの炊事用スポンジは使っているうちにボロボロになる。小さく砕けたスポンジ片はマイクロファイバーと同様下水へと飲み込まれる。プラスチックは自然分解できないのでマイクロファイバーや細かく砕けたスポンジ片は下水の浄化施設や河川、海中に少しずつ堆積していると推測されている。海中のマイクロファイバーは食物連鎖で私たちのもとに戻ってくることは必至である。同時に空気中に浮遊するマイクロファイバーをすでに私たちは吸い込み、マイクロファイバーは少しずつ私たちの体内にとどまっていることが確認されている。プラスチックは有害物質と結びつきやすく、汚染物質の運び手となるため体内にとどまったマイクロファイバーが健康問題を引き起こす可能性が示唆されている。現在、多くの科学者によって自然界や人体への影響がどのようなものか研究が急がれている。

安価な大量生産品を身につける機会が多い貧困層ほど人体への悪影響が出現する可能性は高いと言える。貧困が引き起こす問題は負の連鎖を起こしやすい。少しでも支援につながればという思いからユニセフ・マンスリーサポート・プログラムに長年にわたり参加しているとともに、毎日の炊事用スポンジは“へちま”に替え、生活からSDGsに取り組んでいることをご報告してペンを置く。