SDGsコラム 目標1「貧困」 あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ
2022/06/06
総合的な困窮者支援の必要性(今井誠二)
厚生労働省の調査による仙台市の2015年の路上生活者概数は119名でした。SDG1はあらゆる次元のあらゆる年齢層の人たちの目標ということですので、単純に当てはめることはできませんが、もし仮にSDG1のターゲット1.2をそのまま仙台市の路上生活者に当てはめてみますと、2030年に59名以下に減少させることを目標にすることになります。
五月の連休前後に毎年、全国の路上生活者概数調査の結果が発表されます。今年発表された仙台の概数は88名でした(2022年4月26日厚生労働省発表)。同調査では2003年(H15)は203名になっていますので、約20年間でその数が半分以下に減少したことになります。しかし2003年当時、実際には300人を超えるホームレスが仙台にいました。今年の調査は、厚生労働省の委託を受け、雪が降る1月12日から13日にかけて、手分けして仙台市内の支援団体によって行われたもので、かなり実数に近いものです。ですから、仙台では実際には、この20年間で路上生活者の数は3分の1以下に減少したことになります。仙台のホームレスに限って言えば、15年間で半数にするというSDG1の目標は、それほど現実離れしたものではないと言えるかもしれません。
しかし、この表を見てもわかるように、実際には、東日本大震災後、仙台で確認された路上生活者数は、復旧・復興事業が一段落した後も80名前後の横ばいの状態が続いています。またネットカフェや車上などにいて、ホームレスとしてカウントすることが難しい生活困窮者も増えてきました。仕事を求めて東北にやってきて、新たに路上に出てくる人たちが後を絶たず、多くの人がホームレス状態を抜け出せずにいます。
以前主流であった東北出自の出稼ぎ者のJターン組で、故郷に帰れずに仙台に逗留しているような路上生活者は、今や少数派です。全国から仙台に流れてくる理由は様々ですが、共通しているのは、非正規雇用の状態が続き、様々な理由で失職した蓄えのない人たちが、福島の原発事故処理や東北の復興事業なら仕事があるだろうと思ってやってくるケースです。
とりわけ、ここ数年は、COVIT-19の影響で飲食関係や運輸関係の人々が業績不振で賃金が目減りし、家賃未払いや多重債務に陥って路上に出てくるケース、風俗業界でなんとか凌いできた人たちが路上に出てくるケースも多くなってきています。
多くの支援者たちが、当事者の自律生活のために伴走を続けていますが、相談相手もなく、部屋の整理整頓や掃除の習慣、自炊や近隣の人々とのコミュニケーションをとるスキルなどを身につける暇もなく、長年道具のように使いまわされてきた人たちを「部屋に入れて仕事を見つけさせたら、それで一丁上がり、ホームレス生活とはさようなら」などというわけにはいきません。自分でも気がつかないでいる自律の障壁になっている輻輳した問題を伴走しながら一つ一つ見つけ、解決に導くために各方面に繋げていくプロセスが不可欠です。「生活困窮者自立支援法」が2013年(H25)に成立しましたが、あらゆる貧困に終止符をうつために、生活支援を含む総合的な困窮者支援がますます求められていると言われるのは、こうしたことのためです。