「博物館論」:諸橋近代美術館とダリ
2024/12/01
2024年11月27日(水)の「博物館論」(本学准教授・正田倫顕担当)に、諸橋近代美術館の学芸員・佐藤芳哉様をお招きしました。学芸員の仕事について、現場で働くプロフェッショナルの視点からお話をうかがいました。
講義の様子
諸橋近代美術館は風光明媚な裏磐梯に位置しており、観光スポットとしても人気です。シンメトリーな建物は周囲の環境と調和し、多くの人を惹きつけています。周知のようにこの美術館はスペインの画家・ダリ(S. Dalí, 1904-89)のコレクションで有名ですが、ルノワール(P.-A. Renoir, 1841-1919)やゴッホ(V. van Gogh, 1853-90)、セザンヌ(P. Cézanne, 1839-1906)、ルオー(G. Rouault, 1871-1958)などの西洋近代絵画も所蔵しています。はじめに美術館の特徴をご紹介下さり、ダリが与えた現代への影響を身近な例を通してご説明頂きました。
諸橋近代美術館(撮影・正田倫顕)
次に「博物館法」における美術館の位置づけを確認した上で、学芸員の業務について具体的にお話下さいました。収集、保存管理、展示、調査・研究、教育活動などそれぞれの局面でどのような業務に従事し、いかなる苦労があるのか。その実態について、豊富なスライド資料とともにお示し頂きました。学生たちは興味津々にお話をうかがい、とりわけ作品の輸送にともなう困難や工夫に驚いていました。展覧会の企画や海外出張の様子もご紹介頂き、美術館の現場で学芸員がどのように働いているのかがありありと見えてきたようでした。
尚絅学院大学5G教室
ダリの生い立ちとともに、作品の鑑賞の仕方もご教示頂きました。早世した兄の存在や美しい妹、妻・ガラなどが芸術家の精神に大きな影響を与えていました。とりわけ三つ上の兄は二歳で亡くなりましたが、両親はダリに兄と同じ名前をつけました。そのため兄の身代わりとして愛されているのではないかという不安に苛まれていたそうです。死産した一つ上の兄と同じ名をつけられたゴッホと通じるものがありました。
様々な絵画や映像を通して、人間の認知機能についても新たな気づきをもたらして頂きました。キャプションを見て満足するだけではなく、美術作品を自分の目でじっくり鑑賞することについて考える貴重な機会になりました。質疑応答の時間も活発な発言があり、学生にとっては作品の見方について再考できる、目からうろこが落ちるような講義であったと思います。
佐藤芳哉様、ありがとうございました。