尚絅学院大学

人文社会学類 お知らせ

【人文社会学類】著書紹介 三上貴教編『映画で学ぶ国際関係Ⅱ』(永澤雄治先生)

2023/09/25

今回は、私が『映画で学ぶ国際関係Ⅱ』に書いた映画評について、紹介したいと思います。
永澤雄治「風の谷のナウシカ―深刻な環境汚染と人間の選択」『映画で学ぶ国際関係Ⅱ』三上貴教編、法律文化社、2013年。

「ナウシカについて書いてくれないか」と依頼を受けたのは、2012年末のことだった。ナウシカとは、もちろん宮崎アニメの『風の谷のナウシカ』のことだ。
映画を題材とした国際関係論のテキストを出版する企画に誘われたのだが、実のところ余り乗り気ではなかった。私の授業ではドキュメント映像を見せることもあるので、授業で使えそうな作品を意識的に探すことはあるが、フィクション映画はあまり見ない。この企画はフィクションに限定されていたため、私は断るつもりで「アニメくらいしか見ないので書ける作品はないよ」と編者に伝えると、「アニメを見るんだったら、ナウシカで・・」ということになってしまった。

三上貴教編『映画で学ぶ国際関係Ⅱ』(法律文化社 2013年)

三上貴教編『映画で学ぶ国際関係Ⅱ』(法律文化社 2013年)

この企画は2005年に出版された『映画で学ぶ国際関係』の続編で、第1弾でもナウシカを取り上げようとしたらしいが、書き手がおらず断念したそうだ。宮崎アニメには多少の思い入れもあったので引き受けてしまったが、締切り一ヶ月前は憂鬱な気分になっていた。この段階に来てようやく「なぜナウシカの書き手がいなかったのか!!」ということが、身にしみて理解できたからである。1984年公開の『風の谷のナウシカ』は、ジブリ創設前の傑作として有名であり、批評の対象になることも少なくない宮崎アニメの中でも群を抜いて多くの評論が書かれている作品だった。今さら他に書くことがあるのだろうか・・・・?

1990年代後半に、社会倫理学のI氏を招いた研究会が仙台で開かれた。ロールズの正義論に関する報告だったが、I氏は『ナウシカ解読』という作品論を出版していたこともあり、ナウシカについても言及していた。そこで聞いた作品解釈に違和感を抱いていたことが、執筆の動機として作用していたかもしれない。

既存の評論に影響されたくなかったため、第一稿を書き上げるまでは他の批評に目を通さないことに決めて執筆に取り掛かった。第一稿の後で改めて読んでみると、幸い他の評論と重なる箇所は無かった。完成原稿を仕上げ、最後の校正も済ませた2013年2月、ある本の出版情報が舞い込んできた。ジブリが自ら編集した『ジブリの教科書1 風の谷のナウシカ』が同年4月に出版されるらしい。執筆者は故立花隆氏を筆頭に著名な方々ばかり。ナウシカ解釈の決定版が出るのではと内心ヒヤヒヤしていたが、杞憂に終わった。同年5月に『映画で・・Ⅱ』が出版された際、一応ジブリにも献本させて頂いた。何の反応も無かったけど・・。