西内美香先生(健康栄養部門)がBBB論文賞(2018年)を受賞!
2019/09/04
総合人間科学系 健康栄養部門 准教授 西内 美香 先生 は、東北大学大学院の駒井教授らとの共同研究により、”Orexigenic action of oral zinc: metabolomic analysis in the rat hypothalamus.”( 経口摂取した亜鉛の食欲促進作用:ラット視床下部のメタボローム解析)を日本農芸化学会 英文誌「Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry」に発表し(Vol.82(12), 2168-2175,2018)、2018年BBB論文賞を受賞しました。
BBB論文賞は、日本農芸化学会英文誌Bioscience, Biotechnology, and Biochemistryに掲載されたRegular Paper, Communicationより毎年優秀な論文に授与されるものです。
亜鉛不足による食欲不振は、亜鉛の経口摂取で回復
亜鉛は生体で様々な生理作用を担っている必須微量元素です。亜鉛の生理作用の一つに食欲の調整があります。亜鉛が不足すると食欲が低下し、亜鉛を経口的に摂取すると食欲が回復することが知られていますが、その発現機構は未だ明らかではありません。
西内先生は、長年にわたり病院の管理栄養士として勤務してきた中で、食欲がない患者に亜鉛入りゼリーを食べさせると摂食量が多くなり、病状の回復を助けることを明らかにしてきました。
この研究は、亜鉛による食欲の調整メカニズムについて、食欲の調節を司っている脳の視床下部という部位で起こっている脳内物質の変化をメタボロミクスという手法を用いて探究したものです。その結果、亜鉛欠乏食を3日間食べて食欲が低下したラットに亜鉛を経口的に投与すると摂食の促進が短時間で起き、視床下部の脳内物質に変化が生じていることがわかりました。一方、同じように亜鉛不足で食欲が低下したラットに亜鉛を腹腔内投与(静脈注射のモデル)しても、摂食の促進は起きませんでした。これらの結果から、西内先生らは、亜鉛シグナルが摂食の中枢である視床下部に伝達されることによって発現する食欲の促進は、亜鉛が消化管を経由することが必要であると推察しました。
西内先生らの今回の研究は、亜鉛の食欲調整作用のメカニズムの一端を解明するためにとても重要な発見です。詳細はこれからですが、西内先生は、さらに研究を進めてメカニズムを解明したいと意欲を燃やしています。