8月 ティクバ便り
2023/08/30
「夢を意識して日常生活に生かしてみよう」
相談員 三好 敏之
みなさんは夜見る夢についてどのように感じています?
その夢と現実の出来事と照らし合わせてマイナスでその夢を解釈していませんか?またその夢を見る時は熟睡の時ですか?朝方ですか?今回はこの夢について考えてみました。
夢についてはフロイトやユングの夢解釈が有名です。
夢分析では、夢の中で生じた事には夢を見た人の無意識があらわれていると考えます。そして、患者が見た夢についての意味を探る事で、患者の病についての理解を深めようとするものです。日本では河合隼雄氏が有名で、いろいろな本を出されています。明慶上人の夢解釈は有名で一度読まれるととても奥深いものがあります。是非この機会に拝読を!
まずフロイトの夢分析から見てみましょう。フロイトによれば夢の素材は、記憶から引き出されており、その選択方法は 意識的なものではなく、 無意識的である。 したがって一見すると乱雑な夢の内容においても無意識に基づいた統合性が備わっており、さまざまな出来事を一つの物語として連結させるものである。 それにはさまざまな狙いがあるが、一般的には夢とは潜在的な願望を充足させるものである。つまり夢は無意識による自己表現であると考えることができる。治療への応用でフロイトは夢において充足させようとする願望がイメージにより曖昧に表現されているかについて注意を払っていると解釈されるのであります。
次にユングの夢分析から見てみよう。ユングの夢分析は、この集合的無意識を細かく分類してまとめたものです。そこでユングは集合的無意識を裏付けるため夢日記をつけたり、患者に夢日記を書いてもらい、その夢に現れた人物や事柄などの内容を細かく分類し、その患者との対話を通して無意識的に何を抱えているのか紐解きしながらより良く過ごすための答えを導き出していたと考えられています。夢は、意識と無意識の相互作用によって形成されるため、まずは夢を見た人の意識の状態を知る事が大切だと考えたのです。見た夢からその意味を一義的に決めつけるのではなく、まずはその日の出来事や、考えた事や感じた事を聞いていきます。そして、夢の内容から連想される事を多方面から聞いていくのです。また、ただ1回の夢だけではなく、何回かにわたって記録していくことでテーマの進行を見る分析が行われると考えました。いずれにしてもユングの夢分析では、分析家と被分析者の共同作業が重要となります。
ユングが大切にした考えは、次の言葉に表れています。夢を解釈する人に対して、あまり急いで解釈しないように、大きな声でこう呼びかけてやりたいくらいなのです。「とにかく理解しようとはしないように」と。実際僕は、関西で夢分析を18年、2人のユング分析家に週1回夢分析をしました。1つの夢を分析家と一緒にその夢を話しあいます。例えば、「大事な自分の靴が見つからず探す夢を見たとしましょう。分析家はその夢を聞いて解釈はしません。分析家から大事な靴は今も履いているの?その靴はあなたにとってどんな意味があるの?と聞き、自分は改めて靴に考えます。そして、その靴が見失い、探すことの意味を考えて、自分の無意識で新たに整理する課題が意識かして、こんなことを夢は伝えてくるのかな?」と自分でその夢を分析家のイメージの質問を通して自分で夢のもつ不思議さを考えることになります。
ユングは、夢が意識に対して持つ最大の意義は補償作用だとしています。このようなユングの見解を参考としつつ、河合(1994)は夢の機能を次のように分類しています。
- 単純な補償 意識の態度を補償したり、意識の足りないところを補うような機能です。
- 展望的な夢 夢が将来へのプランを提示してくれるような機能です。心理療法の初期に見られる初回夢は、フロイトも重視しています。
- 逆補償 高くなりすぎている意識を引き下げようとする機能です。
- 無意識の心的過程の描写 意識の力が弱まっている時に、無意識過程そのものが夢に現れる場合です。精神障害を抱えていたり、病気や疲労の時に認められます。
- 予知夢 その後に起きる事を予見するような夢です。河合(1994) は、息子の死とその場に居合わせた人の名前まで予見した例を挙げています。
- 反復夢 現実にあった出来事がそのまま夢に出てくるものです。現実との違いに着目すると、補償夢であると判明する場合が多いとされています。
皆様、夢にもいろいろあることに気づかれたと思います。ユングの夢の見解を参照に、夢からもらえる無意識からのメッセージを改めて考えてみるのもおもしろいかもしれません。私も未だに夢日記をつけるようにしています。少しでも覚えていた日に記録をする習慣をつけていくと、次第に思い出しやすくなります。一見嫌な夢であっても、その続きを想像したり、不快な対象の立場に自分を置いてみたりすると、新しい気づきが生まれて来ることもあります。夢に意味がないと思えばそれまで。ですが、その夢の自分にとっての意味を何か引き出そうとする人にだけ、見えてくるものもあります。フロイトやユングの夢分析を参考にしつつ、自分なりの夢分析をしてみることで、深層心理を味方につけられたら良いですね。
参考文献
『明恵 夢を生きる』 河合隼雄著 講談社, 1995.10 (講談社+α文庫)
河合隼雄(1994). 河合隼雄著作集第1巻 ユング心理学入門, 岩波書店
「からだのこころのつながり」をどのように感じているでしょうか?ストレスがたまると次のようなからだの変化はありませんでしたか?
からだの不調になると次のような症状がでると言われています。
私の研究している臨床動作法では、からだの不調になるとこころの不適応につながります。
それでは、こころの不適応とは一体どのようなことでしょうか?
臨床動作法を考えた成瀬悟策(2009)は、「もともと動くようにできているからだを主体が思うように動かそうと努力する結果、からだが緊張したり動いたりする現象を動作という。」と説明している。
臨床動作法について成瀬(2009)は、「からだの不調を当人自らが処理・解消する努力の過程で、こころの不適応体験が消えていくための心理療法である。」と定義している。
このように考えると、私たちの日常生活でこころの不適応のサインが見られると。からだの不調がでてきていませんか?。こんな時に、からだを動かして動きのかたいところや動きにくいところを発見して動かしてみませんか?少し動かした時に、からだの動きを待っているとからだの固いところが弛む感じや弛むときにほっとしたりする感触を味わうことができると思います。
臨床動作法では、動作法の体験(動作をしている実感:からだを動かしている感じ、動いている感じ)を充分にすることで、動作を伴う体験(自己弛緩とリラックス感、自分のからだの感じがわかる、自分が今ここに存在している感じ、現実に今、身体を動かし動いている感じ、自分自身が重力や大地のなかで今まさに存在している感じ)を感じることができるとしています。
ストレス社会と言われますが、ストレスを感じ、少しでもこころの不適応を感じたら、動作の体験や動作に伴う体験をしてみませんか?そうすることがこころの不適応を減らしていくことにつながっていくと推測されます。
些細な人間関係での悩みや生きていくための生活での私たちの時代はまさにストレスが増していくばかりだと思います。
そんな時は、自分自身をみつめてからだの不調に気づきましょう。なんらかで自分自身のからだの固まったところや動きにくいところに視点をあてて、そのところに自分なりに動かしたり、動きを待っていくアポローチをしながら動かす体験や動かした後の動作に伴う体験を感じることが大切だと思います。
そうすれば自然とこころの不適応も減ってくると考えらえます。
今回は臨床動作法を通して、ストレスのかかる現代社会においてからだとこころのつながりを考えてみました。私たちの日常生活でからだとこころのつながりを意識しながらストレス発散してお互い楽しんで生きていきましょう。
参考文献
成瀬悟策(2009):からだとこころ 身体性の臨床心理 誠信書房