【国際交流リレーエッセイ 第81回】 韓国留学を振り返って
2026/09/09
国際交流リレーエッセイ第81回目は、韓国の協定校での半年間の留学を終え帰国した木村華さん(人文社会学類3年)による報告エッセイをお届けします。
2026年2月末から、私にとって長年の夢であり、人生初の海外渡航でもあった韓国での留学生活が始まった。約4か月という期間は長いようで短く、出発前は「自分は何か変われるだろうか」「何も得られなかったらどうしよう」と、わくわくする気持ちよりも不安な気持ちの方が大きかった。到着直後は、看板の文字や車のナンバープレートなど、目に入るものすべてが新鮮に感じられた。一方で、車の運転の荒さや店員さん、タクシー運転手の接客スタイルなど、日本との文化の違いに直面し、これから始まる留学生活を自分は本当に乗り越えられるのだろうかという考えが頭に浮かんだのを覚えている。
もともと韓国語の聞き取りには比較的自信があったが、実際に生活をしてみると、自分が想像していた以上に韓国語でのコミュニケーションは難しかった。店員さんとの一対一の会話では、緊張から言葉を聞き取れず、相手のスピードについていけないことや、自分が思うように受け答えできない悔しさを何度も味わった。伝えたいことは頭の中に用意できているのに、韓国語でどのように表現すれば良いのか分からず苦戦することもあった。
留学中は語学堂(大学付属の語学学校)ではなく、現地学生と同じ学部の授業を受講したため、専門的な内容についていくことが大変で、課題に追われることも多かった。それでも、毎回韓国語を使わなければならない環境に身を置いたことで、確実に自分の力になったと感じている。また、「韓国人の友達を作りたい」という気持ちがあり、日本に興味のある学生が多い授業も受講していたため、たくさん話しかけてくれるのではないかと想像していた。しかし、現実は思ったほど甘くはなく、自分から積極的に関わろうとする姿勢の大切さを痛感することとなった。特に苦手なグループワークでは、韓国語でうまく意見を伝えられず何度も落ち込んだ。
そんな中、韓国人学生がサポートしてくれる「メンター・メンティー制度」は私にとっていい経験になった。韓国語しか使えない環境だったため、必然的に韓国語を使う機会が増え、とにかく必死に言葉を絞り出して会話を続けた。少しずつ相手とスムーズにやり取りができるようになり、「韓国語で話すことが楽しい」と思えた瞬間の喜びは忘れられない。しかし、授業やメンター制度を通して現地学生と関わる機会はあったものの、そこからさらに関係を深めることの難しさも実感した。それでも、自分から話しかけたり、韓国語で伝えようと努力した経験は決して無駄ではなかったと思う。大切なのは友達の数ではなく、自分なりに挑戦したことそのものに意味があったのだと感じている。
セジョンの街並み、セジョンで食べたキンパ、ソウルのカフェなど
学業以外でも多くの人生経験を積んだ。寮でのルームメイトとの共同生活は簡単なものではなく、生活リズムや性格の違いに悩むこともあったが、自分とは異なる考え方や習慣を受け入れながら柔軟に対応して生活する力を身に着けることができた。休日は、できるだけ部屋にこもらず、バスや地下鉄を利用してさまざまな場所へ出かけた。最初は交通機関の利用にも不安があったが、次第に慣れていった。観光地を巡るだけでなく、事前に調べずに街を歩き、偶然見つけたお店に入ってみることもあった。実際に生活するからこそ見える韓国の日常や文化に触れられたことは、留学ならではの貴重な経験だった。KTXでソウルへ足を運んだり、大田(テジョン)市内のカフェを巡ったり、映画を見に行ったりと、韓国での日常を全力で楽しんだ。景福宮で韓服を着たり、漢江を眺めながらコンビニで買ったラーメンを食べたりしたことも印象に残っている。韓国ドラマで見たような光景を実際に体験できたことが嬉しかった。こうした何気ない日常の一つ一つが、韓国留学したからこそ得られた大切な思い出となった。
大学で開催されたイベントの様子、漢江で食べたラーメンなど
もちろん、留学中は、周りと比べて「自分はまだまだだ」と落ち込んでしまうことも少なくなかった。しかし、その一方で楽しかったことや学んだことも数多くあった。自由に使えるラウンジでアイドルの映像を見たり、友人と何気ない会話を交わして笑いあったりした時間はかけがえのないものである。
ロッテワールドで制服をレンタルし、友人と記念撮影
留学当初はあれほど日本の生活が恋しかったのに、帰国が近づくにつれて、今度は韓国を離れることが寂しくなっていた。この自分の感情の変化に驚くと同時に、現地での生活が自分にとってどれほど大切なものになっていたのかを実感した。帰国後は、一気に現実に戻されたような寂しさも感じている。韓国は日本の隣国であり、似ている部分も多いが、実際に暮らしてみたからこそ分かる違いがある。その中で悩み、もがきながらも、最後まで留学生活をやり遂げた経験は、これからの人生の大きな支えになると思う。根本にある消極的な自分が、この4か月で劇的に変われたとは言い切れない。しかし、留学を選んでいなければ、違う世界を見ることなく、大学生活はただ過ぎ去っていたかもしれない。あの時、一歩を踏み出した自分の選択に、後悔は全くない。この韓国留学で得た確かな財産を胸に、これからの人生を歩んでいきたい。