尚絅学院大学

学校教育学類 お知らせ

【学校教育学類】 卒論演習(ゼミ紹介)―学科から学類へ(田中)

2021/10/15

 卒論演習(ゼミ)の選択は、学生にとってどれだけ自分のやりたいことをやれるか、また担当の先生は誰?といったことで、悩ましいところであり、また一方受け持つ教員の方も、どれだけ真剣に取り組んでくれる学生が我がゼミを選んでくれるのだろうと気がかりなことであります。
 本学は2019年度に学群・学類制を導入したため、今年度の子ども学科の学生は多くが最終学年です。こうした折、私のゼミには三人の学生が『演義三国志』・四字熟語について、論文を書くべく励んでいます。中国関連のことを卒論に選ぶ学生は子ども学科にはこれまでいなかったので、前例を踏襲できないので、多少不安があるところ。
 日本人にもっともよく親しまれてきている中国の典籍は、『論語』・『唐詩選』・『演義三国志』になるでしょう。特に『三国志』は江戸時代から親しまれてきており、関羽・張飛・趙雲といった豪傑は、日本の過去の豪傑の如くに身近に感じられてきています。諸葛孔明の神の如き戦法は痛快でありますし、また彼が北伐して魏との戰いの最中、志かなわず、五丈原で陣没したことは、日本人の判官贔屓の心持ちにもかなっていて、多くの日本人の涙を誘ったものでした(土井晩翠「秋風五丈原」など)。ただ、『三国志』は蜀漢びいきで、曹操は敵役となっており、公平な扱いとはなっておりません。学生の一人は、この曹操に注目して、その英雄としての姿を取りあげようとしています。またもう一人の学生は曹操・劉備玄德・孫権などのリーダーとしての特徴について調べつつあります。蜀漢びいきの『三国志』ではありますが、丁寧に見ていくと、曹操の度量の大きさとまた峻厳な判断力など見事に描かれていて、驚かされることがあります。学生と共に、原文にも取り組みながら、私も考えて行こうと思っています。
 四字熟語は漢語の成り立ちの基本や表現の凝縮性などとも関係していて、大きな問題です。どのような切り口で取り組んでいくのかが工夫のしどころだろうと、話し合っています。不思議なことですが、同じ作品を対象にしても、学生それぞれによって、全く違った文章となってきます。対象作品を鏡としてそれぞれの学生の内面が表現されるのだと思っています。
 学校教育学類の最初の学生は、現在三年生。来年度の卒論への準備的役割も兼ねた「学校教育学演習」で奮闘しています。

(田中和夫)