尚絅学院大学

学校教育学類 お知らせ

【学校教育学類】「西班牙(スペイン)風邪」流行を、どう今に生かす(田村)

2020/12/25

 学校教育学類の田村嘉勝です。 「新型コロナウィルス」感染拡大が逼迫しています。もう、誰が感染してもおかしくない日常に、それでも罹らないようにと私なりに最大限の努力をしています。

 

 訳あって、先頃、今から100年前の、大正7~9年にかけて世界中に猛威を振るった、いわゆる「西班牙(スペイン)風邪」について調べました。主な文献の2冊は共に平凡社東洋文庫、内務省衛生局『流行性感冒─「スペイン風邪」大流行の記録』と富士川游『日本疾病史』です。それらから、「スペイン風邪」の発生源はスペインではないこと、世界的に感染拡大した時は第一次大戦最中であったこと、日本ではやく発症をみたのは神奈川、静岡など港を持つ6県であることなどを知りました。また、感染当初、これは往時の「朝日新聞」によりますと、「伝染病研究所 病気としては恐ろしくない」(大7・10・19)とのコメントがあって間もなく、「國澤医務課長談 患者に近寄るな 咳などの飛沫から伝染 今が西班牙風邪の絶頂」(大7・10・24)の記事が掲載されています。マスク着用、人混みを避ける等が挿絵入りで国民に告知されたのもこの時期です。ご存知の「島村抱月」はこの感染による死去でした。

 

 さあ、皆さん、皆さんの毎日を想起してみてください。管見からではありますが、今まさに猛威を振るっている「新型コロナ」に匹敵する流行性感冒が100年前にあったということがわかります。世界的流行の引き金は軍隊の移動に起因し、そして、神奈川、静岡が早い時期に発症したのは国内外からの人々の移動によるものであるそうです。確かに、神奈川には横浜港が、静岡には下田港があります。

 

 クリスマスや正月、これから楽しい冬休みを迎える反面、例年のインフルエンザ流行も懸念しなければなりません。皆さんも、そして、私も、先ずは、自己管理を徹底し、他者との生活に注視せねばなりません。勿論、感染した方々への誹謗中傷などを忌避すべきは当然です。

 

 別件で調べていた「西班牙(スペイン)風邪」の発生から終息までの経緯に、医学門外漢の私が「新型コロナ」の今後を考えるにあたり、一つの示唆を与えられたような気がします。

 

 【文献】

 富士川游(1969)『日本疾病史』平凡社。

 内務省衛生局(2008)『流行性感冒 「スペイン風邪」大流行の記録』平凡社。