【学校教育学類】贈る言葉
2025/03/18
皆さん,ご卒業おめでとうございます。
門出をお祝いする言葉ですので,それだけに最後に何を伝えるべきか迷います。迷いに迷って,
「いきいき生きる いきいき生きる ひとりで立って まっすぐ生きる」
という言葉を贈ることにしました。
この言葉を書いた劇作家井上ひさしは,1934年山形県川西町に生まれました。家庭の事情で,青森県八戸市,岩手県一関市,そして宮城県仙台市に移り住み,高校卒業までいました。後に,仙台市文学館の初代館長も務めていた方で,現行の中学校国語の教科書(光村図書)には,実在の神父をモデルにしたとされる「握手」という小説が載っています。
また,岩手県の釜石湾に浮かぶ島から着想を得た「ひょっこりひょうたん島」という人形劇を見たことがある人もいるかもしれません。主題歌を聞いたことがある人もいるでしょう。「ム-ミンの歌」も,耳にしたことがある歌だと思います。この歌を作詞したのも,井上ひさしです。
冒頭に紹介した言葉は,井上ひさしが作詞した岩手県釜石市立釜石小学校の校歌の最初の一節です。「つなみ てんでんこ」という津波避難の教えが有名なこの地。釜石小学校が,東日本大震災の際に避難所となった時には,毎朝みんなで校歌を合唱し,励まし合ったそうです。
釜石小学校校歌
井上ひさし 作詞
宇野誠一郎 作曲
1 いきいき生きる いきいき生きる
ひとりで立って まっすぐ生きる
困ったときは 目をあげて
星をめあてに まっすぐ生きる
息あるうちは いきいき生きる
2 はっきり話す はっきり話す
びくびくせずに はっきり話す
困ったときは あわてずに
人間について よく考える
考えたなら はっきり話す
3 しっかりつかむ しっかりつかむ
まことの知恵を しっかりつかむ
困ったときは 手を出して
ともだちの手を しっかりつかむ
手と手をつないで しっかり生きる
4月からの社会人生活。皆さんの胸の中は,不安と期待が入り混じっているのではないでしょうか。
慣れない新生活でも,苦しさの中に楽しさがあり,寂しさの中にも喜びがある。前途多難,それ以上に前途洋々。80年後に自分が何をしているか誰も分かりません。行き着く先が見えない人生だからこそ,自分で決めた道を,毎日精一杯生きることに価値がある。
それが,「いきいき生きる いきいき生きる ひとりで立って まっすぐ生きる」ことだと,私は考えます。
校歌は,動画サイトなどで聴くことができます。これが校歌なのかと驚かされ,そして心が浮き立ち,「いきいき生きる」ことの大事さが実感として伝わってきます。
皆さんのご健康とご多幸を,学校教育学類教員一同,心より願っています。
卒業,本当におめでとうございます!!
(学校教育学類 五十嵐 誓)