尚絅学院大学

学校教育学類 お知らせ

【学校教育学類】 授業紹介「国文学演習Ⅰ(古典)」

2025/01/15

学校教育学類の学生は将来、小中学校の「国語」の授業で、親しみやすい古文を教える立場となります。
「演習」という授業の醍醐味は、実践力を身につけながら一つの作品にじっくり向き合えることです。2024年度の「国文学演習Ⅰ(古典)」(2年次後期)では、東北の地で学ぶ学生たちにとって避けては通れない作品、『おくのほそ道』の読解と模擬授業に取り組みました。

全15回の演習の前半(第1回~第10回)は、教員主導の演習です。教員が編集した教材に基づき、『おくのほそ道』の名場面を読み解きます。読解に役立つ基礎知識を、学修管理システム(Course Power)に配信した資料で学ぶ機会もありました。

12月。後半(第11回以降)は、いよいよ学生主体の演習です。前半で読解した場面の中から一人ひとりが好きな場面を選び、考え抜いた授業案に基づいて15分間の模擬授業に挑みます。模擬授業の後はディスカッション。互いへの敬意と、さらに魅力的な授業をめざす向上心に満ちた、活気ある時間となりました。



1月。授業の総まとめの時期です。年明け最初の演習では、『おくのほそ道』のいくつかの場面に影響を及ぼした藤原実方(ふじわらのさねかた)について学びました。『百人一首』にも和歌が選ばれている平安時代の歌人です。

実方は、左中将まで昇進した後、陸奥守(みちのくのかみ)として陸奥国に赴任します。後代の軍記物語『源平盛衰記』には、傲慢な言動のために神罰を受け、名取の地で亡くなったと伝えられています。
歴史資料に基づく実方の人物像と、後代の文学作品に描かれた人物像とにはギャップがあります。この日の演習はそのことを確認し、「なぜ後代の文学作品ではこのように描かれるのか」に思いを馳せる時間となりました。


作品との時を超えた対話が他者との対話につながり、自己の省察にたどり着く。時には、人の心の残酷さを知り、なぜそうなるのか、どう受けとめるべきかを考察する。古典を読むことは、人生の複雑さに耐える心の礎を築き、現実を超えるための翼を身につける営みでもあるのです。 (文責 松本 真奈美)