尚絅学院大学

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絶滅危惧種ヒメギフチョウ、尚絅で発見

2025/05/21

昨年2024年4月、心理学類の西村学生(尚絅第一発見者)にその写真を見せられて以来、山崎客員研究員(生物・植物学者)と私東は羨ましくて、それで今年2025年の発見をずっと狙っておりました。今回その報告です。(東)

Spring Ephemera: 春の儚い妖精

アゲハチョウ科のウスバシロアゲハ属とギフチョウ属は「スプリング・エフェメラ」と呼ばれています。ともに約3,000万年氷河期前からの生き残り(生きている化石)といわれ、アゲハチョウ先祖の形態を持っています。早春の限られた数日間で一斉に羽化し、カタクリやスミレなどで吸蜜し子孫を残して一週間で儚くも消え去ります。

ヒメギフチョウ:♂ (11/Ⅳ/2025)

ヒメギフチョウ:♂ (11/Ⅳ/2025)

  

ギフチョウ属には西日本と日本海側に棲息するギフチョウ(Luehdorfia japonica)と北東日本のヒメギフチョウ(Luehdorfia puziloi)の2種が含まれ、その美しさと儚さ、希少性から昆虫マニア垂涎の的の一つとなっています。各県で絶滅危惧種に指定されています。それら幼虫の食草であるウマノスズクサ科の植物は里山などの雑木林の林床に生育し、里山の減少と崩壊からその群落も激減していると言われています。

ヒメギフチョウ:左♂,右♀ (11/Ⅳ/2025)

ヒメギフチョウ:左♂,右♀ (11/Ⅳ/2025)

食草トウゴクサイシンも発見

尚絅の森にはウマノスズクサ科のトウゴクサイシン(Asarum tohokuense)が生育しています。本種は長年ウスバサイシン(Asarum sieboldii )とされていましたが、十年くらい前に東日本のものは独立別種であることが判明し、新たに新種登録されました。

林床のトウゴクサイシン(26/Ⅳ/2025)

林床のトウゴクサイシン(26/Ⅳ/2025)

キノコのような・・・これが花?

この植物の花は地面付近に咲き、不思議な形態をしています。それは花粉を運搬する昆虫に秘密がありそうですが、まだ解明されていないようです。一説によれば、媒介昆虫はキノコに産卵するキノコバエともいわれています。なるほど、キノコのような花です。

トウゴクサイシン:花(26/Ⅳ/2025)

トウゴクサイシン:花(26/Ⅳ/2025)

ヒメギフチョウ の卵塊も発見

このトウゴクサイシンが生育していることから、尚絅の森におけるヒメギフチョウ棲息も期待されておりましたが、確認できず今に至りました。ところが!昨年、心理学類の西村学生さんがその写真を見せてくれました。そこで本年、徹底的に調査しました。

その結果、雌雄数個体のヒメギフチョウを確認することができました。カタクリ満開の頃、枯葉が敷き詰められた林床に舞い踊る幻の妖精を目撃した感激は、黄泉の国に迷い込んだような筆舌に尽くし難いものでした。その後、トウゴクサイシンの葉に複数の卵塊も確認できました。

キャンパス内に、しかも校舎から数分圏内にヒメギフチョウが棲息している大学は、本邦広しといえど、本学だけかも知れません。里山活動として、学院の学生・生徒・園児、ゆりが丘近隣の皆さんと一緒に、ヒメギフチョウとトウゴクサイシンの保護活動ができれば、なんと素晴らしいことでしょう。(客員研究員:山崎)

ヒメギフチョウの卵塊(26/Ⅳ/2025)

ヒメギフチョウの卵塊(26/Ⅳ/2025)

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