【子ども学類】特定外来生物アカボシゴマダラ増殖中
2024/02/22
悪意ある大量放蝶によって日本に持ち込まれた外来種アカボシゴマダラ(Hestina assimilis・タテハチョウ科)が、2020年頃から尚絅の森でも繁殖していることを以前に報告しました。温暖化の影響でそれが高じたのか、明らかに個体数が増えているようです。食草のエノキ(Celtis sinensis・ニレ科)では、近縁のオオムラサキ(Sasakia charonda)やゴマダラチョウ(Hestina persimilis japonica)の幼虫以上に目につくようになりました。見つけた個体だけでも駆除すべきかとも思いましたが、広大な里山では氷山の一角に過ぎません。無意味な駆除活動はせずに、しっかり観察して記録をとることにしました。
一斉に羽化したアカボシゴマダラ(17/Ⅷ/2023)
7月に年1回羽化するオオムラサキに比べれば幼虫の成長は早く、5・6月、8月、9月に羽化を確認しました。年3回、発生のサイクルを回しているのかも知れません。その旺盛な繁殖力に伴う葉の消費で、エノキの食害が目立ってきたようにも感じられます。このままではオオムラサキたちの居場所(ニッチ=niche)が奪われるかも知れません。
幼虫と成虫の頭部(29/Ⅳ/2023,16/Ⅸ/2023)
羽化が連続した9月のある日、ススキ(Miscanthus sinensis・イネ科)の葉にとまっている羽化したての個体を発見し、よく見れば、その脇に蛹の抜け殻がありました。この蝶はエノキ以外の場所でも蛹になることを確認しました。
ススキで羽化した個体と蛹,その標本(16/Ⅸ/2023)
秋ともなれば、エノキの樹勢は衰え葉も伸展しなくなります。9月下旬に羽化した個体から生まれた幼虫は、11月下旬に入っても大きくなれず、葉をすっかり落とした枝にとどまっていました。オオムラサキやゴマダラチョウの幼虫は落葉の中に潜り、とっくに越冬態勢をとっています。今年は暖冬ですが、周期的やって来る東北の厳冬が彼らを淘汰してくれるかも知れません。そしてある寒い朝、彼らの姿はありませんでした。
秋の幼虫と越冬幼虫(12/Ⅺ/2023,5/Ⅱ/2024)
ところが、しばらくたって年も改まり、落ち葉の中を調査していた東先生が越冬している小さなアカボシゴマダラの幼虫を発見しました。とりあえず、今年もアカボシゴマダラは発生するようです。
(「子どもの自然環境教育」担当者)