保育を基礎とした子ども家庭支援 ー執筆した教科書の紹介ー
2023/03/24
子ども学類の専門教育科目を担当している前田です。
執筆担当した『子ども家庭支援論ー保育を基礎とした子ども家庭支援ー』(同文書院)が出版されましたので紹介させていただきます。
子育て家庭を支えていくことの必要性
子ども家庭支援論(表紙)
令和5年4月1日より、こども家庭庁が発足します。日本の少子化高齢化はコロナ禍でさらに深刻化しておりますが、児童虐待や貧困問題、子育て環境の孤立化など子どもを育てにくい環境であることが指摘されています。今後は、こども家庭庁が「こども政策」の司令塔として機能していくことで、子どもを取り巻く環境が改善し、人々が安心して子を産み育てられる社会になっていくことを祈るばかりです。
かつて私は、保育士として子どもの保育と保護者支援を担ってきました。子どもの成長を保護者と分かち合い、子育て家庭を支え続けることが保育士の責務であり、保育専門職の魅力であることを19年間の現場経験を振り返って実感しています。私は、子どもの保育だけでなく保護者支援の必要性と重要性を学生たちに説きながら、教員として10回目の春を迎えようとしています。
教科書を通して保育学生に伝えたいこと
この度、保育士資格取得のために必要な科目「子ども家庭支援論」の教科書の一部を執筆しました。詳しくは以下の同文書院のリンクをご参照ください。
保育ニュー・スタンダード「子ども家庭支援論 −保育を基礎とした子ども家庭支援−」太田光洋編著(同文書院)2022年11月15日発行
https://www.dobun.co.jp/shop/tkxcgi/shop/goods_detail.cgi?GoodsID=00000423
教科書は全14章で構成されており、私は第10章「保育所・こども園・幼稚園を利用する子ども家庭支援」を担当しました。
上記の通り、この科目は「保育士資格」取得に必要な科目ですが、就学前の子ども家庭を支援するために必要な知識・技術は、幼稚園児やこども園の園児のいる家庭も同じです。子育て家庭支援の基本はどちらも共通していますので、幼稚園における家庭支援の必要性も含めてまとめました。なお、保育士(保育所・保育園)と幼稚園教諭(幼稚園)、保育教諭(こども園)ををまとめて保育者と記載します。
子育て家庭にとっての保育者は、子育て家庭にとってどの地域にもいる身近な子育ての専門家です。毎日我が子を育ててくれる存在であり、子育ての不安や悩みを受け止め、アドバイスをくれる相談相手でもあります。親は子を持つことで親になりますが、親としてはまだまだ未熟な存在であり、だんだんと親として成長していきます。その親が親になる過程を支えていく重要な役割を持っています。
教科書には「初めての子育てに一生懸命な1歳児の夫婦」の事例を載せました。事例があると学生もイメージしやすくなります。教科書を通して共働き家庭の様子が伝わればと思い、当時を思い出しながら、このケースにおける保育者の役割をまとめました。字数の関係で多くの事例は載せられませんでしたが、授業ではもっとたくさんの事例を紹介しておりますので、ぜひ尚絅で保育を学びましょう。お待ちしております。
子どもの数ほど、子育て家庭の数ほど支援の方法は多岐に渡ります。しかし、子育て家庭を支援する理由はシンプルで、子どもの健やかなる育ちのためです。子どもがよりよく育つためには、その子どもが生まれ育つ家庭が望ましい環境であることが重要です。そして、その家庭の中で最も重要な人的環境である保護者を支え、愛情あふれた子育てができるよう保護者を支えていくことが保育者に求められています。
近年増えている児童虐待のニュースを見ると心が潰れそうな思いを抱きます。その子どもや保護者に寄り添う保育者が関わっていたら…と強く思わされます。こども家庭庁の創設に表れているように、子どものいる家庭を支える保育者の役割は、今後もますます重要になることでしょう。子どもと保護者にとって、信頼されるような、安全基地になれるような保育者を育てていく保育者養成校としての使命も感じています。
高校生や保育現場でも非常に関心の高いテーマです
ここ近年、高校での模擬授業や各市町村の保育現場研修から依頼されるテーマのほとんどが、子ども家庭支援についてです。2021年度は4件、2022年度は5件ありました。このように、世代を問わず、非常に関心の高いテーマであることがうかがえます。
高校では45分〜50分、現場研修では90分〜4時間と担当する時間がいろいろですが、内容は現代の子育て家庭の現状を理解し、保育者の役割を知っていただくことを大きな目的としています。高校生と現場の保育者では保育に関する知識や経験が大きく異なりますが、保育士の頃のエピソードを紹介しながら説明することで、授業・研修内容がわかりやすいという感想を多くいただいております。
最後に、この教科書を手に取る保育学生の皆さんに、現代の子育て家庭を丸ごと支える保育者の役割の重要性とやりがいが伝わることを切に願います。
(文責:前田有秀)