【子ども学類】関東と東北がZOOMでつながる;「保育実習指導Ⅰ」の新たな試み①
2022/07/08
「保育実習指導Ⅰ」の授業では、例年、学外実習に向けた事前学習の一環で、福祉施設の現場の先生をお招きして特別講義を実施しておりました。ここ数年はコロナ禍のためその実施を断念しておりましたが、今年は新たな試みとして、関東地方の現場の先生にZOOMでご講義いただくことを企画・実施いたしました。
《ZOOMによる特別講義》
現場での様々な取り組みや実践が、後に新たなサービスの創出や制度化につながっています。今回は児童養護と障害者福祉のそれぞれの分野をけん引する関東地方の2施設について勉強させていただきました。学生たちは多くの学び・気づきを得るとともに、実習に向けて気持ちを引き締め直す機会となり、とても貴重で有意義な時間となりました。
第一弾 児童養護施設
特別講義の第一弾は、2022年5月25日(水)2限目、東京育成園(児童養護施設)の副施設長髙橋直之先生にご担当いただきました。児童養護施設とは、災害や事故、親の離婚や病気、不適切な養育を受けているなど様々な事情により、家族による養育が困難な2歳からおおむね18歳の子どもたちが生活している施設です。
当日は以下の内容についてご講義いただきました。
・施設概要(グループ構成、施設の小規模化、家庭的な養育・環境など)
・児童の状況(入園理由、在園年数、退園理由、保護者の状況など)
・支援内容(日常生活、学習、心理治療など)
・子どもたちの背景にある課題への取り組み(家庭復帰、自立支援、保護者支援など)
・子どもたちの理解と支援の上で大切にしていること
学生の学び・気づき・感想
受講した学生たちの学び・気づき・感想のいくつかをご紹介いたします。
・東京育成園のホームの紹介で写真を見て、モダンな家の造りで家庭的な雰囲気作りを行っていると感じました。また、一人ひとりの部屋の造りや家具の配置なども違いを作り、子どもが自分のだけの部屋という特別感を味わえたり、子ども同士で違いを楽しめたり工夫していることに驚くとともに、一つ一つの環境にも意味があり、配慮されていることを学びました。子どもたちは来たくて施設に来ているわけではないため、情緒が安定しづらく、トラブルになる場面もあるが、将来、施設が楽しかった、いい思い出ができたと思えるよう、子どもたちの現在に働きかけ、子どもと一緒にいることが大切であるという髙橋先生の話がとても印象的で、このことを私も子どもとの関わりで大切にしていきたいと考えました。
・家庭復帰が想像していたよりも遥かに早い例もあり、驚きました。家族の再統合の支援や自立支援、進学の支援などがありましたが、子どもの意思を尊重できるような支援を行うことが施設の職員の役割だと学ぶことができました。
・一番印象に残ったのが、保護者をどう理解するかです。虐待のニュースを見るといたたまれない気持ちになり、なぜそんなことをするのかと怒りが湧くことがありす。しかし、子どものより良い支援のために、保護者を否定的に見るのではなく、虐待を許すということではないが、そうなってしまったその過程や背景を理解する、ということが必要だということを学び、考え方を改める良い機会になりました。
・結婚の挨拶に施設を訪れたり、着物を見せたいと訪れたりしていると聞き、本当にその子どもにとっての一つの大事な家庭なんだと感じました。児童養護施設では子ども一人ひとりが自分の人生を自分らしく生きられるよう、長期的に大切に援助していくことが大切なのだと学びました。
・特に印象に残ったのが「施設に来たくて来たわけではないのに、大人の勝手でいろんな事を言われるからムカついて反抗する」という言葉です。私たちが実習に行ってショックを受ける事を言われて「どうして?」と思うかもしれないけれど、子どもたちは意味なくそういった事を言っているのではなく、今までの経験やちゃんとした理由から自分を守るために言っているんだというのが分かったので実習でもその点を肝に銘じて臨みたいと思いました。また、児童養護施設では「子どもたちに寄り添うのが仕事」というのを聞いて、親代わりである施設の職員がいるだけで、頼れる存在がいるという安心感の大切さに改めて気づくことが出来ました。私も子どもたちに少しでも良い影響を与えられたらいいなと思います。
・今回のような貴重な機会をいただいたことにより保育士という職業の多様な側面や可能性の広がりを感じ、自分の保育観や支援観に取り入れたいという想いが生まれました。私たち学生の背中を鼓舞するお言葉までいただいたことに、深く御礼申し上げます。この機会を励みに、今後も日々の学びの積み重ねを大切にしていきたいと思います。
おわりに
髙橋直之先生のあたたかなお言葉とお人柄に触れ、学生たち一人ひとりが心を揺り動かされ大きな影響を受けました。この度は貴重なお時間を割いて下さり大変ありがとうございました。
(文責:子ども学類 兎澤)