SDGs×パラスポーツ
浦澤 真人 氏 プロフィール
私は2013年にコルジャ仙台に加入しました。もともとサッカー経験はないのですが、この競技に魅了され指導者資格をとりました。2016年まで監督を務め、2017年からクラブ代表を務めています。
代表の役割としては、クラブの価値を高めるために社会の様々な繫がりを作ること。そこでブラインドサッカーを社会の中で当たり前のものとなるような活動と、そこから「視覚障がい者と健常者が当たり前のように混ざり合うこと」という日本ブラインドサッカー協会の理念を地域で実践できるような活動を行っています。
コルジャ仙台の概要
コルジャ仙台は2012年に発足したチームです。日本ブラインドサッカー協会に正登録している東北地方唯一のチーム。現在は選手・スタッフ約25名で活動しています。2020年5月現在、男子日本代表1名・女子日本代表1名の代表選手が所属しており、練習は週に1回仙台市内の施設で行っています。
ブラインドサッカーは「視覚障がい者5人制サッカー」という競技名でパラリンピックの正式種目になっています。日本国内でプレーする場合は視覚障がい者の他に晴眼者もアイマスクを着けてプレーできるので、日頃から視覚障がい者と晴眼者がお互い助け合っています。
最初はプレーするのが精一杯でしたが、監督や選手の努力の甲斐もあり2020年2月に行われた全国大会において準優勝を収めることができました。
混ざり合う社会
視覚障がい者は様々な訓練やIT技術の進化により、日常生活のだいたいの事が出来ると聞いています。ただ、どうしても健常者の皆さんにお手伝いをいただかなければならない場面もあります。電車のホームでの転落事故や、自動車事故など、痛ましい事故も起きています。
そうした意識も含め、少子高齢化の日本で視覚障がい者も「社会の戦力」として活動していただくために今以上の健常者と視覚障がい者の繋がりを持ちたいと考えています。
ブラインドサッカーは視覚障がい者と健常者が一緒にプレー活動する競技なのでこうした活動自体が「混ざり合う社会の縮図」になっています。ブラインドサッカーを知っていただく事で「混ざり合う社会」の一端をお見せできると思っています。
今年2月に行われたブラインドサッカークラブ選手権準決勝
ブラインドサッカーは視覚障がい者のために考案された競技ですが、日本国内での大会に関しては晴眼者もプレーできます。
この写真ではコルジャ仙台(緑)の選手は晴眼者で、紺のユニフォームの選手は視覚障がい者です。アイマスクを着けることで同じ条件にすることで公平性を担保しています。
ベガルタ仙台佐々木匠選手との1対1
時にはプロのサッカー選手やフットサル選手とデモンストレーションとして一緒にプレーする機会もあります。通常のサッカーやフットサルではとても敵いませんが、アイマスクを着けてのプレーであれば引けを取りません。
選手は視覚に障害があってもサッカーができる、ブラインドサッカーであればサッカー選手やフットサル選手にも負けないというプライドを持って日々頑張っています。
視覚障害の子供たちへの運動の場の提供
ブラインドサッカーはピッチの中では自分の判断で走ったり歩いたり自由に動くことができます。
視覚に障害のある子供たちは安全性などの問題もあり、日頃一人で走り回ったりボールを使って遊ぶことが難しい状況です。そこでブラインドサッカーを通じて広いピッチで自由に走り回る機会を提供しています。
ブラインドサッカーの体験会
全国各地でブラインドサッカーの体験会が開催されています。私たちコルジャも東北各地で様々な方々よりお招きいただき体験会を行っています。
体験会では、情報の8割を得ているという視覚を遮ることにより今まで簡単に出来ていた「伝える・聞く」という事が難しくなります。この体験からコミュニケーションの大切さを学んでいただいてます。
体験していただいた方々からは「視覚を失うとほとんどのことが出来なくなってしまう」「視覚を失っている方に伝えるという事がこんなにも難しいものなのか」「簡単にあっち・そっちという事が通用しない世界での行動はとても難しい」と、見えている方の日常からはおよそかけ離れた体験をしていただき、視覚障がい者の世界を体験体感していただく事でブラインドサッカーという競技と視覚障がい者について理解をしていただくようなカリキュラムを行っています。
若者の皆さんに向けて
社会の様々な部分に向けてアンテナを高くしている若者の皆さんはブラインドサッカーから社会の様々な部分を感じることが出来ると思います。
それは良い部分だけではなく、現在の社会で足りない部分も見えてくるかもしれません。若い皆さんが声を挙げていただく事はその後の未来に大きな波紋を与える可能性があります。
是非とも「見えないサッカーから見える世界」を経験してほしいです。