【出版情報】講師の能田昴先生執筆「濃尾震災(1891年)における子ども救済と特別教育史研究」のご紹介
2024/01/11
本学講師の能田昴先生が執筆した「濃尾震災(1891年)における子ども救済と特別教育史研究」についてご紹介いたします。
本書は「災害・感染症パンデミック・戦争等の災禍と子ども救済の特別教育史」の開拓をめざし、過去の代表的な災害における救済のあり様を、社会的弱者、特に子ども(孤児・障害児含む)の被災の実態について歴史的検証を行うことを目的とし、特に濃尾震災(1891年)における子どもの被災・救済の実態を実証的に解明することを試みたものです。
具体的には、国民国家形成期の明治日本社会と災害の関係性を明らかにしながら、歴史のなかで災害に晒される子どものいのちと発達を考えるため、濃尾震災による学校教育システム・児童生徒への影響に関する実態解明、濃尾震災を契機とした児童保護救済事業に関する実態解明を行いながら、子ども(孤児・障害児含む)の被災と救済・教育保護活動の実態を究明することが研究課題となっています。
この研究目的にしたがって、序章・終章および本論8章の全10章から構成されています。序章および第1章では研究レビューをふまえながら研究の課題を明らかにし、第1部では濃尾震災と国家・地域行政による救済対応の諸相に関する検討、第2部では民間篤志家による救済対応の取り組みに着目され、被災孤児の罹災実態や災害救済に伴って社会的弱者・「子どもへの特別な配慮」が発生する事例について検討が行われています。
■目次
刊行によせて:災害と子ども被災・救済の特別教育史研究を拓く(髙橋智)
序章 研究の課題と方法
第1章 明治期日本の災害・児童救済保護に関する先行研究の検討
第1部 濃尾震災と国家・地域行政による救済対応の諸相
第2章 濃尾震災と近代国民国家体制における社会的弱者の救済
第3章 濃尾震災による岐阜県下の子ども・学校の被害実態と教育復興の取り組み
第4章 濃尾震災による愛知県下の子ども・学校の被害実態と教育復興の取り組み
第2部 濃尾震災と民間篤志家による救済対応の諸相
第5章 石井十次による孤児救済活動と震災孤児院・岡山孤児院における取り組み
第6章 石井亮一による孤児教育保護活動と孤女学院・滝乃川学園における取り組み
第7章 森巻耳とA.F.チャペルによる濃尾震災被災盲人の救済活動と「鍼按練習所」「岐阜聖公会訓盲院」の開設
第8章 長崎における濃尾震災義援活動と長崎慈善会・安中半三郎および野村惣四郎による長崎盲啞院の設立
終章 研究の総括と今後の課題
あとがき
文献
■出版社 : 風間書房 (2022/10/15)
■発売日 : 2022/10/15
■言語 : 日本語
■単行本 : 266ページ
■ISBN-10 : 4759924388
■ISBN-13 : 978-4759924381
■寸法 : 14.8 x 1.6 x 21 cm
こうした研究をふまえながら、能田先生は共同研究を通して、過去においても、現代においても、①子ども・社会的弱者の生命・生存への直接の脅威となる危機・災害において、子どもが抱える困難・支援ニーズが深刻であること、②共通して見えてくる、その中でも懸命に生きてきた子どもの「いのち・生活・発達」の姿の一端や、それを支えようとしてきた「教育」「保護」の価値・可能性、③「緊急時」に最も影響を受ける子ども・障害当事者の実態・声をふまえて各種の行政施策や発達支援に反映させるべき蓋然性への警鐘、④社会が大きな衝撃・ダメージを受ける中にあっても、子どものセーフティーネットおよび子どもの成長・発達に不可欠な支援システムとしての学校教育・教師の意義・役割・機能について改めて検証する必要があることについて発信しています。