尚絅学院大学

教員紹介

上村 静 (うえむら しずか)

上村 静

所属
人文部門 
職位
教授 
学位
博士 
担当科目
国際文化論、現代の倫理、世界の宗教と文化、宗教思想、ディアスポラ学、チャレンジ言語B(現代ヘブライ語)、専門演習、卒業研究 I・II  

授業担当分野の概要(卒業研究を含む)

1)生命倫理(人工妊娠中絶、尊厳死、脳死臓器移植等)や社会倫理(死刑制度、差別問題、戦争等)についてのグループディスカッション。
2)世界の主たる地域の宗教と文化の特徴についての講義。
3)「宗教」という言葉に含まれる思想的側面と政治的側面についての講義・演習。
4)「ディアスポラ」(少数民族として外国で生活する人たち)の置かれている状況と共生のための彼らの知恵を考察する演習。
5)現代社会の抱える諸問題の諸相とその根本原因となる思想・価値観について考察する演習。

研究分野と所属学会

【研究分野】ユダヤ学、宗教学、聖書学

【所属学会】日本宗教学会、日本ユダヤ学会、京都ユダヤ思想学会、日本聖書学研究所、日本旧約聖書学会、日本新約聖書学会

研究のキーワード

古代ユダヤ思想、旧新約聖書、宗教、国民国家、差別、共生 

接続可能な開発目標(SDGs)

  • 1.貧困をなくそう
  • 2.飢餓をゼロに
  • 3.すべての人に健康と福祉を
  • 4.質の高い教育をみんなに
  • 5.ジェンダー平等を実現しよう
  • 6.安全な水とトイレを世界中に
  • 7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに
  • 10.人や国の不平等をなくそう
  • 11.住み続けられるまちづくりを
  • 16.平和と公正をすべての人に

現在の研究テーマ

1)古代ユダヤ社会における差別の問題と、ディアスポラの民として差別されてきたユダヤ人の生き残りの知恵についての研究。
2)「宗教」概念の成立と「近代国民国家」の成立の相互関係、および「政教分離」という概念の欺瞞性についての研究。
3)「死海文書」の翻訳と発行。

研究成果の概要

1)宗教は人のいのちを救うためにあるはずなのに、なぜ宗教を原因とした戦争がなくならないのかという問いに対して、古代ユダヤ教から原始キリスト教の成立に至るまでの思想史を辿ることで、現代世界の諸問題の根源となる価値観のゆがみを明らかにした。

2)旧約聖書各文書および新約聖書各文書のそれぞれが、どのような時代背景のもとで、どのような人によって生み出されたのかを明らかにすることによって、特定の書物群が「聖なる書物」とされることの功罪を明らかにした。

3)20世紀最大の考古学的発見と呼ばれる「死海文書」――死海沿岸のクムラン遺跡から発見された前3世紀~後1世紀に書かれた聖書および聖書関連文書の写本と、それ以外のこれまで知られていなかった多くの文書――の日本語訳を発行中。

主な業績(研究実績・作品発表)

〔著書〕
1)『イエス──人と神と』(fad叢書1:関東神学ゼミナール2005年)
2)『キリスト教信仰の成立──ユダヤ教からの分離とその諸問題──』(fad叢書4:関東神学ゼミナール 2007年)
3)『宗教の倒錯──ユダヤ教・イエス・キリスト教』(岩波書店、2008年)
4)『旧約聖書と新約聖書──「聖書」とは何か』(シリーズ神学への船出3:新教出版社2011年[2021年第4刷]) 
5)Land or Earth? A Terminological Study of Hebrew eretz and Aramaic ara in the Graeco-Roman Period, (Library of Second Temple Studies 84; London-New York: T&T Clark, 2012)
6)『キリスト教の自己批判──明日の福音のために』(新教出版社、2013年)
7)(編著)『国家の論理といのちの倫理──現代社会の共同幻想と聖書の読み直し』(新教コイノーニア30:新教出版社、2014年)
8) 『終末の起源──二つの系譜 創造論と終末論』ぷねうま舎、2021年
9) (編著)『差別の構造と国民国家──宗教と公共性』法蔵館、2021年

〔論文〕
1)「史的イエス再構成の道──方法論的課題──」『東京大学宗教学年報』11号(1994年)95-131頁
2)「イエスと人の子──メシア称号としての『人の子』の起源──」『宗教研究』302号(1994年)109-135頁
3)「イエスにとっての<神の支配>──その『終末論的』解釈の再検討──」『聖書学論集』28号(1995年)162-220頁(『日本の聖書学』[ATD・NTD聖書註解刊行会]2号[1996年]57-102頁再録、著書1所収)
4)「イザヤ書6章9-10節──頑迷預言?──」『聖書学論集』34号(2002年)23-67頁(『日本の聖書学』8号[2003年]44-86頁再録、著書2所収)
5)“Isaiah 6:9-10: A Hardening Prophecy?,” Annual of the Japanese Biblical Institute 27 (2002) 23-57
6)「ユダヤ教における人の子──言語学的考察──」『新約学研究』31号(2003年)5-26頁(著書1所収)
7)“The Origin of the ‘Son of Man’ as a Messianic Title: A Philological and Tradition-Historical Study,” Annual of the Japanese Biblical Institute 28 (2003) 3-32
8)「『神の他によい者はいない』(マルコ10:18)──イエスと原始キリスト教の連続・不連続──」『新約学研究』32号(2004年)19-51頁(著書1所収)
9)「五書がトーラーな理由」『ユダヤ・イスラエル研究』21号(2006年)17-28頁(著書2所収)
10)「古代パレスチナ・ユダヤ教における死後の世界と終末論」細田あや子・渡辺和子編『異界の交錯・下巻』(リトン、2006年)139-175頁
11)「後1世紀パレスチナの空気」『新約学研究』35号(2007年)5-30頁
12)「聖書の非神話化と再神話化」松村一男・山中弘編『神話と現代』(リトン、2007年)183-210頁
13)“The Climate of First-Century Palestine,” Annual of the Japanese Biblical Institute 32 (2006 [2008]) 127-155
14)「『地のために贖う』(1QS 8.6)──クムラン共同体のセクト主義──」『旧約学研究』5号(2008年)77-92頁
15)「大貫『イエス論』考」『聖書学論集』41号(2009年)213-231頁
16)「『聖書』と『歴史』──解釈学的問題──」市川裕・松村一男・渡辺和子編『宗教史とは何か【下巻】』(リトン、2009年)123-145頁
17) “Am ha-Aretz: The Development of Its Concept in Literature and History,” Annual of the Japanese Biblical Institute 34-36 (2008-2010 [2011]) 85-132
18)「ユダヤ人がユダヤ人である理由──古代ユダヤ人の〈民意識〉──」『ユダヤ・イスラエル研究』25号(2011年)1-13頁
19)「ルカはなぜパウロの最期を記さなかったか──ルカの歴史認識──」『新約学研究』41号(2013年)7-26頁
20)「聖書解釈の限界とその現代的意義」『京都ユダヤ思想』4号(2013年)101-104頁
21)「蒔かれた種のたとえ(マルコ4:3-8)──神の支配の光と影──」『新約学研究』42号(2014年)7-24頁
22)「コヘレトとイエス──ニヒリズムによるエゴイズムの克服──」『聖書学論集』46号(2014年)215-238頁
23) 「古代ユダヤ教における二つの思想潮流──創造論と終末論──」『人間学論究』1(2018年)19-61頁
24) 「ラビ・ハニナ・ベン・ドサ──預言者、奇跡行為者、そしてラビへ──」杉木恒彦・高井啓介編『霊と交流する人びと──媒介者の宗教史【下巻】』(リトン、2018年)135-166頁
25)「神殿の崩壊──第4エズラ記──」『聖書学論集』50(2019.09)1-21頁
26)「クムランと死海文書──神殿時代末期のユダヤ社会の同時代史的視点から──」『ユダヤ・イスラエル研究』33(2019.12)13-25頁
27)「イエスとパウロ──創造論と終末論──」『人間学論究』2(2019.4)25-49頁
28)「第二神殿時代におけるガリラヤのリーダーたち──ユダヤ性への問い──」勝又・柴田・志田・高井(編)『一神教世界の中のユダヤ教──市川裕先生献呈論文集──』(リトン、2020.01)163-188頁
29) 「聖書学における反ユダヤ教主義——「規範的ユダヤ教」から「共通ユダヤ教」へ——」『人間学論究』3(2020.12)19-34頁
30)「恥知らずな男?(創12:10-20)──ディアスポラの民としてのアブラハム──」『旧約学研究』16(2021.10)87-103頁
31) 「ディアスポラと国民国家──「ユダヤ人」であること──」『差別の構造と国民国家──宗教と公共性』法蔵館、2021年11月、141-167頁
32)「イエスの接触──ツァラアト/レプラ、聖性と穢れ──」『宗教研究』96/2(404)号(2022.9)29-53頁
33)「古代ユダヤ思想における終末論と創造論―死後の生をめぐる思弁を中心に―」『聖書学論集』54(2023)143-170
34)「戦間期のユダヤ教(70-132年)──ユダヤとガリラヤ──」『人間学論究』6(2024)24-47

〔研究ノート〕
「マルタにおけるパウロの奇跡物語──マルタ人歴史学者マリオ・ブハジャーの研究から──」『人間学論究』5号(2022.12)46-64

〔翻訳〕
1)J・ニューズナー「ユダヤ教における宗教的権威──現代のあり方と古典のあり方──」『日本版インタープリテイション』22号(1993年)67-91頁
2)J・ニューズナー「宗教間対話は成り立つか?」中央学術研究所編『宗教間対話の可能性と課題』 (中央学術研究所、1993年)378-393頁
3)R・L・ロールボー「マルコの聴衆の社会的位置」『日本版インタープリテイション』26号(1994年)83-114頁
4)J・K・リッチズ「イエスの社会的世界」『日本版インタープリテイション』42号(1997年)86-105頁
5)W・シブリー・タウナー「想像の危機──理想のエルサレムに対峙する現実のエルサレム──」『日本版インタープリテイション』56号(2000年)22-41頁
6)(共訳)P・シェーファー『タルムードの中のイエス』(岩波書店、2010年)
7)(共訳)E・シューラー『イエス・キリスト時代のユダヤ民族史IV』(教文館、2015年)
8)(共訳)『死海文書 VIII 詩篇』死海文書翻訳委員会訳(ぷねうま舎、2018年)
9) 『死海文書 IX 儀礼文書』死海文書翻訳委員会訳(ぷねうま舎、2018年)
10)(共訳)『死海文書 VI 聖書の再話1』死海文書翻訳委員会訳(ぷねうま舎、2018年)
11)(共訳)『死海文書VII 聖書の再話2』死海文書翻訳委員会訳(ぷねうま舎、2019年)
12)(共訳)『死海文書I 共同体の規則・終末規定』死海文書翻訳委員会訳(ぷねうま舎、2020.10)
13)(共訳)『死海文書III 聖書釈義』死海文書翻訳委員会訳(ぷねうま舎、2021年)

〔その他 (書評)〕
1.田川建三著「書物としての新約聖書」『福音と世界』(新教出版社)1997年7月号 44-46頁
2.D・フルッサー著「ユダヤ人イエス」『本のひろば』(キリスト教文書センター)2001年9月 20-21頁
3.山森みか著「『乳と蜜の流れる地』から」『キリスト新聞』2002年8月10日
4.M・フィロネンコ著「主の祈り」『本のひろば』(キリスト教文書センター)2004年2月 18-19頁
5.辻学、水野隆一、嶺重淑、樋口進著、関西学院大学キリスト教と文化研究センター編「聖書の解釈と正典──開かれた『読み』を目指して」『福音と世界』(新教出版社)2007年7月号 64-65頁
6.滝澤武人著「イエスの現場──苦しみの共有」『新約学研究』(日本新約学会)37号2009年8月 68-72頁
7.池澤夏樹著「ぼくたちが聖書について知りたかったこと」『聖公会新聞』2009年12月25日
8.手島勲矢著「ユダヤの聖書解釈」『宗教研究』(日本宗教学会)366号2010年12月 138-144頁
9.(新刊紹介)秦剛平・守屋彰夫編「古代世界におけるモーセ五書の伝承」『ユダヤ・イスラエル研究』(日本ユダヤ学会)25号2011年12月 73頁
10.八木誠一著「〈はたらく神〉の神学」『新約学研究』(日本新約学会)42号2014年7月77-81頁
11.ロドニー・スターク著「キリスト教とローマ帝国」『ユダヤ・イスラエル研究』(日本ユダヤ学会)29号2015年12月95-98頁
12.澤村雅史著「福音書記者マタイの正体──その執筆意図と自己理解」『新約学研究』46号2018年7月74-78頁
13. 「J・J・コリンズ著/山吉智久訳『「死海文書」物語』」『本のひろば』(2020.11)6-7
14.「小林昭博著『同性愛と新約聖書──古代地中海世界の性文化と性の権力構造──』」『宗教研究』96/3(405)号(2022.12)79-84頁
15. 「浅野淳博著『死と命のメタファ──キリスト教贖罪論とその批判への聖書学的応答』(新教出版社、2022年)」『人間学論究』6(2024)75-110

〔その他 (事典項目)〕
1.「タルムード」 単著 『キリスト教辞典』岩波書店2002年6月
2.「ミシュナー」 単著 『キリスト教辞典』岩波書店2002年6月
3.「ミドラシュ」 単著 『キリスト教辞典』岩波書店2002年6月
4.「D・フルッサー著『ユダヤ人イエス[決定版]』」 単著 『宗教学文献事典』弘文堂2007年12月
5.「J・ペリカン著『イエス像の二千年』」 単著 『宗教学文献事典』弘文堂2007年12月
6.「S・サフライ、S・メナヘム編『総説・ユダヤ人の歴史』」 単著 『宗教学文献事典』弘文堂2007年12月
7.「H・コンツェルマン著『時の中心』」 単著 『宗教学文献事典』弘文堂2007年12月
8.「M・ディベリウス著『イエス』」 単著 『宗教学文献事典』弘文堂2007年12月
9.「アモライーム」 単著 『聖書学用語辞典』日本キリスト教団出版局2008年3月
10.「社会科学的聖書解釈(文化人類学)」 単著 『聖書学用語辞典』日本キリスト教団出版局2008年3月
11.「タンナイーム」 単著 『聖書学用語辞典』日本キリスト教団出版局2008年3月
12.「人の子」 単著 『聖書学用語辞典』日本キリスト教団出版局2008年3月
13.「ヤムニア会議」 単著『聖書学用語辞典』日本キリスト教団出版局2008年3月
14.「ユダヤ教」 単著 『イスラーム世界研究マニュアル』名古屋大学出版会2008年6月

〔その他 エッセー〕
1)「『復活』と『永遠の生命』への希望・『私の生命』と<永久なるいのち>」『福音と世界』(2008年4月号)12-17頁
2)「いのちを救うことか殺すことか」『福音と世界』(2013年1月号)44頁
3)「生命といのち」『福音と世界』(2013年2月号)42-51頁
4)「「ぶどう園の労働者の譬え」(マタイ二〇1-15)から」『福音と世界』(2013年4月号)45-47頁
5)「「コヘレトの言葉」から」『福音と世界』(2013年5月号)45-48頁
6) 「「非人」とされたキリストと天皇──象徴から人間へ──」『福音と世界』(2017年8月号)6-11頁
7) 「クィアなディアスポラを生きる──国民国家の終わりを見据えて──」『福音と世界』(2018年8月号)12-17頁
8) 「つくられた終末──「神のように」なろうとすること──」『未来哲学』2(2021.5)156-177頁
9) 「被災者でない私が「被災地」に住むと」『尚絅学院大学紀要』81号(2021)20-23
10) 「イスラエル民族神話の揺らぎと終末論──キリスト教の母胎──」『福音宣教』75/10(2021年11月号)38-44頁
11)「ディアスポラの力」『河北新報』「ともしびの丘」2022年12月17日
12) 「国民になったユダヤ人」『河北新報』「ともしびの丘」2023年12月9日

主な学内活動

図書館運営委員(2014~2015)
宗教部副部長(2015~2019)
大学院人間学専攻主任(2019)
教務部(2019~2021)
宗教部長(2023~2024)

その他

【出身地】 茨城県
【留学経験】 ヘブライ大学(イスラエル国エルサレム市)