尚絅学院大学開学20周年
リレーエッセイ
12月のリレーエッセイ:「渡部治雄の尚絅学院大学への思い」(初代学長 渡部治雄先生夫人/渡部昌子)
2023/12/01
12月のリレーエッセイは、本学初代学長 渡部治雄先生 夫人の渡部 昌子様よりエッセイを寄稿いただくことができましたのでご紹介いたします。
大学創立20周年おめでとうございます。夫、渡部治雄が天に召され9年になります。尚絅に関係する皆様のご協力で大学設立にかかわり、初代学長として活動できたことに感謝申し上げます。
2002年4月、それまで6年間勤務した山形県立米沢女子短期大学を離れ尚絅に赴任しました。それは2001年秋頃、夫の所属する仙台北三番丁教会の前牧師深田寛先生(当時尚絅学院理事長)より大学設立にご苦労されている話をお聞きしたり、「力を貸してくれないか」とのお声がけがあったとのことで、キリスト教の信者であった夫はそれこそ天職と受け取り、お手伝いの決心をしたと思います。
高校在学中最上川で受洗した彼は、「キリスト教を若い人に伝えたい」という信念がありました。東北大学在学中は東北大学基督教青年会館(のちに渓水寮と呼称)に住み、聖書研究をしたり、同じ信仰を持つ友人と交際し、就職してからは各大学でYMCA、YWCAの活動に参加し、教会では青年会の方々と共に過ごし、東北大学に勤務以後は生涯渓水寮の理事としてその運営に関わるなど、若い方々との交流を大切にしてきました。深田牧師からのお誘いは神様のご指示と受け取り、進んでこの仕事に足を踏み込んだことと思います。
2002年4月より大学設置準備室に勤務し、それまで多くの方々が努力してきた設置準備の仕事のお手伝いを始めました。彼は以前当時の文部省の大学設置審議委員(関西・九州地域)を担当したことがあり、大学設置に関する知識は豊富でした。その経験が生かされて、文科省の大学設置基準に対応する申請が順調に出来たのだと思います。一年後尚絅学院大学設立が実現し、初代学長という重責を担うことになりましたが、設立という大仕事を完遂でき大変喜んでおりました。
大学の設置・運営は外形だけでなく内実が重要です。4年制大学に求められる組織の充実こそ大切と学部配置・人事・カリキュラム・教職員の体制など苦慮しておりました。特に建学の精神であるキリスト教と学生とのかかわり、人格養成の基本となるものへの願いが強かったと思います。キリスト者は「神に奉仕する」という信仰を持って動いています。夫は怖いもの知らずで、自分が正しいと思う行動にチャレンジして強引に進むので、その信念の強さから、他の先生方との間に溝が出来るのではないかとハラハラしておりました。周囲の皆様のおかげで、無事職務を全うでき安心いたしました。
今や尚絅学院大学は建学の精神に基づいた個性ある大学として多くの青年を教育し、社会に派遣して20年にもなりました。他人を大切に、互いの人格を認め合う人間観、誠実さを武器として活躍する若者の宝庫となっていることでしょう。そのように成長する学生への思いなど在職中に記述した文書類が事務の方々によってまとめられ、“All For God”というタイトルをつけ退職の記念品としていただいた時、夫は感激し、感謝しておりました。夫が尚絅学院大学に関われたことは本当に幸運なことでした。その間に多くの方々に力を貸していただき、支えていただいたことを心より御礼申し上げます。
夫は大学に礼拝堂をと切に希望しておりましたが、「大学には図書館が先だ」と決断し、図書館の建設を優先しました。夫の退職後の2012年、大学に独立した礼拝堂が完成した時、彼は教職員や同窓生の方々の念願が叶ったと非常に喜び、多くの方々に自慢しておりました。彼にとってはそれが一番のご褒美だったのかも知れません。